ほとんどヒーロー

この作品は、少年サンデー第一回連載(短期集中)記念作品である。

この頃は今観るとかなり絵が下手だが、新しいギャグ漫画を目指そうと(自分のカラーが伝わるかどうか)必死になって書き込んでいるのがよくわかる。(!?)ストーリィの作り方や、話の進め方、起承転結など何もマスターしていなかった頃の行き当たりばったり漫画である。このネタは大阪の大学の寮から阿倍野に向かう電車の中で、(準急35分)考えたモノ。1から5話まで、全部この間に考えた。(始めっから全5回と決まっていた)細かいところは後で結構悩むのだが、1,4話が特に気に入っている。確か冬休みに札幌で全部描いた。86ページ目に出てくる煉瓦の家の二階が仕事部屋(私の部屋)だった。漫研の友人達が一緒に徹夜しながら手伝ってくれた。資料や写真を見ながら作画する経験が無かったため、背景がいい加減に描かれているが、それはほとんど私の描いたモノである。スズメの形が今とは違うが、当時は、「このいがんだ形と目の位置」でなければ、ぐっと来なかったため、これが正しいスズメの基本形である。後に作られる「スズメバッヂ」もこの形に準じている。

第1話 2色カラー付き。朝走って登校するところから始まるなど、島本のカラーがかなり濃く現れている。その走りの謎を解き明かすために、キャプテンも走るなど、全編走りっぱなしである。島本は走る話が好きだ・・・と言うより、走る話しか描けないと言っていい。徹夜してくたくたになってやっと上がった・・・と枚数を数えてみると、なんと一枚足りない!!〔おお!!このときからそのミスをやっていたのか!!〕しかもカラーページが!!P89(に当たるページ)が描いてなかったのである!成る程気づかないはずだ。無くっても話が通じるのである。「そうか、こういうページが俺のネームのいらないところなのか」などと一つ成長しながらも泣く泣くみんなが寝ている中ふらふらになって書き上げる。まだこの頃は、ふらふらになって描いたページはやっぱりふらふらの絵だ。何とか楽に!!早く!!(今と方向性は全然変わっちゃあいない。)ということで、最後のコマなどは、「う・・・うわあ・・・デッサンが狂っている絵だあああ」と思いながらもそのまま出した。想い出のカットだ。かなり思い出深いカットだ。この話は結構評判もよく、島本作品が初めて週刊誌に載った記念すべき第一作である。地元の本郷通り商店街にあった本郷書店が発売日に、「地元のヒーロー」と書いて宣伝してくれ、ものすごく嬉しかった記憶がある。
第2話 こんな短いページ数で話を一つ終わらせたのは初めて・・・・の第2話である。P102の、[ぴ・・・ばきっ]と言うギャグ(と言うか演出)は、その後いろいろ他でまねされた誇り高いギャグである。P108の一番下のコマは、「普通に描くので白黒反転してくれませんか」と頼んだところ、「(面倒くさいから)自分で描きなさい!」と言われ、ホワイトで描いた、想い出深いコマである。当時女の子から来たファンレターに、「ほとんどヒーローは、とても面白いのですが、2話目が、面白いのかどうか解りません」とあった。確かにそうかも知れないなあ・・・と思いながらも、「そういう回もあってこそ、『いい回』が盛り上がるのだ!!」と全然気にならなかった。なんか自信に満ちあふれていて、話作りの未熟さ、絵の下手さなども気がつく暇など全くなかった。いいのだ、そんなもんは、気がつかない方が!!
第3話 通常の展開をいかにギャグでねじ曲げて進めるかと言う初期島本の本領発揮の回。だから内容は全くと言っていいほど「無い」。P120の「人間のくず」は、サンデー掲載時にはちょっとこれは・・・と言うことで、見送られたページ。(このページも抜いても大丈夫な一枚だったか!!)P126の2コマ目はこの作品を読んでくれた読者からの似顔絵で、よく送られてきたカット(主人公じゃあない!!)である。扉の「ふっふっふわたしはスズメ!!」は、担当編集の人がアオリとしてつけたセリフ。結構気に入ってるので、取らずに残して置いたモノ。ちなみに、個人的にはヒロインの天野さんより、ここで出てくる生徒会室にいる女の子の方が私は好きだ。
第4話 野球よりボクシングが好きならそっちを描きゃあいいじゃないか!!(燃えるVにもそんな状況が確かにあった。)とつっこみを入れたくなる第4話。ラストのタオルを投げようとするシーンは好きなシーンの一つだ。P149の天野さんは、この漫画の中で一番いい表情をしている。P147の女の子(受験生)は、そのころ仕事場で流行っていた(ダイナマン)の、「ダイナピンク」である。この頃妙に戦隊モノが流行っていて、雪祭りで5人分の(レッド、ブラック、ブルー、イエロー、ピンク)お面を買ってきて、狭い部屋の壁にずらっと並べて貼ったりしていた。眠が立ち上がるシーンはこの話の中で一番いいシーンである。ちなみにこの頃好きだったのはダイナマンよりも、終わってしまったゴーグルファイヴのほうである。買ってきたお面も、ゴーグルファイヴのお面だ。(そんなことはどうでもいいか。)

第5話 ついに最終回だ!「結構人気があるからもっと続けるかい??」と言われたが、ここまでしか話を考えてなかったのと、必殺技を持たない主人公ではこれ以上話を続けられる自信が無かったので、予定通りここで終了する事にする。この頃は照れくさいにも関わらず、ちゃんとヒロインとのいちゃいちゃシーンが入っている。この当時漫画と言えば「ラブコメ」の時代だったので、こういうシーンは何を置いても絶対欠かせなかった。「全員デッドボール作戦」などは、いかにも島本和彦らしい作戦で、とても気に入っていて、当時自信もあったが、今観ると、よくこんなモノを皆さん読んでくれたなーとちょっとだけハラハラする。でもこの頃からだんだん読者のギャグセンスが今までのドタバタからちょっと違った方向に向かってきたんじゃあないのかと思う。でもこういうのは、その時代に生きている若者じゃなくては解らない感性ギャグで、当時の編集も、言ってしまえば今の私にもよく解らない(おいおい)。だが、同じ時代の若い読者には結構これが伝わってくれたのだ。全くありがたい話である。