あしたのガンダム

この作品は、「ガイナックス」がやっていた販売部門の「ゼネプロ(ゼネラルプロダクツ)」からの依頼で書いた一編。ゼネプロはその前に、仮面ライダーの表紙(模型情報)の仕事や、ウルトラアイの模型を貰ったり「大日本」のビデオを貰ったりと、色々おつきあいがあったが、・・・・と言うより、ガイナックスの庵野氏、赤井氏、山賀氏とは大学時代の同級で、同じグループではなかったが(体育のバスケットでは同じグループだった。)互いに、と言うか私が一方的にライバル視していたグループであった。私にアニメの道を諦めさせてくれたのが庵野であり(それほどに彼のペーパーアニメはすごかった!)、私がやりたいなあと思うことを先に、すごいテクニックでやっていたという、恐ろしいグループであった。それはともかく、ガイナックスと私は、関係があるようでないような、「友達」的関係である。「友達」からの依頼は断れない。だが、さすがに、「ガンダムの漫画」は書けないので、断った(断ってるじゃあないか!!)。それでも、ガンダムばかりの新雑誌(と言うか専門誌)の立ち上がりに一役買って欲しい・・・と言われればなんかやってあげたいような気もする・・・と言うことで打ち合わせの結果、「絵コンテ風」ならモビルスーツを細かく描かずに済む!?と言うことで、相手の編集さんはかなり不安な様子だったが、まあこの線で・・と言うことで承諾を貰った。このときにはもう島本の頭にはほとんど完成図が浮かんでいて、かなりいけるモノになるだろうと言う読みはあった。、ただし、ガンダムは良いが、問題は「あしたのジョー」だ。今時あしたのジョーのネタが解ってくれるアニメファンが読者の中に何人いるか・・・いいか!私が解ればいいか!!私が楽しければいいか!!ということで(この辺が「友達から頼まれた仕事」に対する独特の「甘え」が見られる。)時間もないし、ゴーサインを出すことにした。そして島本はどんどん描き進める。「ジョー」は物語もセリフも頭の中に入っているから、ネームはどんどん進む。もう楽しくて楽しくて仕方がない。ジョーとガンダムの両方にのめっている人なら絶対がっちりはめる自信があったが、問題はこの世の中にそんな人が何人いるか・・・だ。安彦の絵も結構それなりにうまく(思ったより)雰囲気を出している。ジョーもうまく安彦タッチの絵に融合している。くー・・・!!こんないいもの(!?)を描いても解る人がいないとは・・・!!「おい来たぜ新しいお客さんが」とか、「おんどりゃーっ命いらんちゅーんやなーっ!!」とか、「もう大気圏突入はやめだ」とか、「真っ黒な残骸だけが残る」とか、次から次へとびしびし決まる。この手のを描かされたら誰にも負ける気がしないと言うほどスピーディに脂のこってりとのったネタが出てくる。最後の「君は生き残ることが出来たら明日はどっちだ!?」と言うセリフなども「これが解る人だけがこの漫画を本当に解ってくれる人だ!!」と言う、そんなところで読者を審判してどうする!? と突っ込みたくなるような 気合いでガシガシ書きまくったネームだ。解らない人のためにちょっとだけ解説すると、ガンダムのテレビ版は毎週、予告編の最後に「君は生き延びることが出来るか!?」と言う永井一郎のナレーションが入るのだが、同様にあしたのジョーのアニメにも「・・・・(ついに念願のリングに上がるジョーの)あしたはどっちだ!?」と言う藤岡重慶(丹下段平)のナレーションが入っていたのだ。この当時再放送では予告編はカットされるのが常だったし、ガンダムはともかく、ジョーはビデオさえ発売以前のことだから、よっぽどのファンでない限り、つまり最初のテレビ放映時から見ていて、もう20代後半にもかかわらず、まだあしたのジョーが好きで、さらにガンダムも好きな人・・・・と言う、絞りに絞られた読者層を対象にして、この作品は書かれたのだ。まあ、他にもこの本にはちゃんとしたガンダム漫画は載っているし、まさか単行本に収録されるなんて思っても見なかったので、これはこんなモノで良い作品ではあったのだ。ちなみに、作品中の「指定」は当時実際にアニメの会社で演出をやっていた友達に入れて貰った。後に「岡崎つぐお」先生から「島本君がこんなに安彦を描けるとは・・・」とお褒めの言葉をちょうだいしたのも良い想い出である。

殴り合い宇宙

これは、たしか「サイバーコミック」が一周年の記念号にもう一度書いてくれーと言う話でもう一度依頼が来たときに、『いや、ガンダムは描けない!特にあのモビルスーツは!!』と断ったのだが、じゃあモビルスーツ専門の手伝い人をつけるから・・・と言うことで、「しめしめそれならモビルスーツばっかりでる話を考えて、私はほとんど描かずに原稿料だけせしめてやれ!!」という素晴らしいアイディアが浮かんだために時間もないのにオッケーを出したモノ。しかし編集者の連れてきたのは、アシスタントではなく、「漫画家。」漫画家をアシスタントとして連れてきたのではなく、漫画家を「漫画家」として連れてきたのだ。そして「打ち合わせをして下さい。」と言う。そんなこと言われても、だってあんた、「モビルスーツを描けるアシスタント」を連れて来るって言ったのに、これじゃあ全然話がちがうじゃあないか!!・・・・・と思ったが、そんなことを相手の漫画家さんの前で言うわけにも行かず、仕方がないので打ち合わせをしたが、何か半分半分受け持ちでやる合作になると言う話になってきて、気の弱い私はまさか「じゃああんたモビルスーツ全部やってね」なんて言えるはずもなく、(編集者には言えても漫画家同士では言えないもんなんだこれが!)結局「合作」と言う形のモノをやることになっちゃったんだ。うう・・・・ なんだかんだで、彼(そうま氏)はうちの事務所の近くに済んでいたこともあり、マウンテンバイクで颯爽と来て、私が「挑戦者」でぎっちりになっている横で、描き始めていた。ネームは、私としては全部そうま氏にやって貰いたかったのだが、そうも行かず、「私の担当する部分」「ナレーションのネームのいくつか」は私が手がけた。何日かして、やっと「挑戦者」も終わり、じゃあそろそろガンダムでもやるかーと言うときに、かなりの量をそうま氏はこなしていた。ちなみにそうま氏のキャラクターは、初めネーム段階では男だったのだが、彼が女の子が描きたいと言い始め、確かにこの場合女の子の方が面白い(このときまだ最後の落ちは決まっていなかった。)と言うことで、こういう図式になった。ちぎれた腕がピクピク・・・というのはそうま氏の演出で、結構良い演出だ。他の誰かと共作をすると私のキャラクターがさらに際だって良い感じである。ラストは実はちょっと気に入ってないのだが、まあページも少なかったし、最後の最後で考えたものだし、二人でアイディアを考えるとなると、やはりちょっと遠慮してしまって、(おそらくそうま氏も気を使っていたものと思われる。)長い時間踏ん張れないもので・・・ま、これはこれで良いか!!ちなみにこの頃は サインが欲しいと言われると、「カラーボード」にイラストを描いてプレゼントしていた時期で、(その方が色紙より簡単だし色の乗りもいい。下書きもできる。)このとき来ていたそうま氏のアシスタントと確かそうま氏にも何かプレゼントしてあげたと思う。結構出来の良いイラストをいろんな人に描いてあげたようで、今全部並べてみてみたいが、無理だろうなー。そんなのを集めたイラスト集も作ってみたいなあ・・・。